雁字搦め
一行の 雁や端山に 月を印す
蕪村
(ひとつらの かりやはやまに つきをおす)
俳句をわからぬ自分のような人間でもこれは趣向があると偉そうに感じ入るものがあって、特に言葉遊びなどの意味を知ればそれだけで素人目に面白く感ぜられてしまう。上の蕪村の句などは気を抜いていると目が句の上を滑るだけということも起こり得ようが、雁の飛ぶ様子が雁字と言われるように文字に例えられるものだと知ると謎が解けるようなものである。言うまでもなく一行(ひとつら)というのも雁字からの連想であるし、月を印すというのも印を押したように月が丸かったのであろう。
ところで、がんじがらめという語は雁字搦めという表記をするということを予測変換で知った。縄などでぐるぐる巻きになった状態と雁字という語の持つ意味は繋がらないが、がんじという別の語があってそれに雁字と漢字を当てたのだそうだ。こういう細かいことをいちいち研究している人がいることは素晴らしい。