水素水を信じる人はあほなのか否か

「水素水を飲むようになってから寝起きがいいんです!」(埼玉県  38歳  主婦)

「運動の前に水素水を飲むと脂肪の燃焼が良くなって体重5kg減りました。」(山口県  45歳  会社員)

「水素水でがんが治りました!」(東京都  62歳 自営業)

 

例えば上のような宣伝を見て、水素水すげえ!となるとしたら恐らく騙されやすい性格なので気をつけた方が良いだろう。このブログを読むような人は水素水が健康にいいなんてこれっぽっちも信じていないと思う。無論自分も水素水の効果は全く信じていない。では水素水を信用できない理由はと聞かれるとどう答えるだろうか?少し考えて欲しい。自分の場合はこうである。

エビデンスがない」

全くこれに尽きると思う。他にはどのような意見が考えられようか。水素は水に溶けない?水素水のふたを開けるときに水素が逃げてしまう?水素が体内に吸収されるはずがない?などと答える人をツイッターでよく見かける。曰く、高校程度の理科の知識があれば水素水に騙されることなんてないそうである。

水素水を販売する会社はよくこう言う。水素は体内の活性酸素を除き老化を防ぐ、と。こう言われるとどう反論するべきだろうか。活性酸素が老化の一因になるというのは科学的に根拠はある。水素が活性酸素を除くというのも試験管レベルでは起こってもよいとも思う。こうなるとなかなか高校の理科の知識では対応できないのではなかろうか。では、水素は活性酸素を除き老化を防ぐという主張にはどう答えるべきか。ここでも「そんなエビデンスはないからそう主張するなら証拠を出せ」と答えるよりない。

生命というのはあまりにも複雑で神秘的だ。勃起と一酸化窒素が関係しているといったように。同じ気体の水素が体にどのような影響を及ぼすかをどう理論から導けようか。これはほとんど不可能である。水素が体に良いか悪いかなんて簡単にわかるものではない。実際作用機序がよく分かっていない医薬品も多く上市されている。ここにおいて水素水の効果を人間で確かめる唯一の方法はランダム化された比較試験を行うことだろう。つまりある集団において人々を無作為に2群に分け、一方の群には水素水を、他方の群には普通の水を飲んで生活してもらい、注目する因子について測定する。まあそもそも水素水についてはこのような試験を行うだけのエビデンスがないのであるが。

とすると高校理科の知識で全てを断ずることはできないだろう。だが高校理科の知識が全く無用かというと決してそんなことはなく、水素水は健康にいいと言われたときに、ほんまか?と違和感を感じることができるのは大切だ。違和感を感じたものに関しては情報を鵜呑みにするのではなくしっかり検証せねばならない。理想的には論文等の一次的なソースを利用するのが良いだろうが、無論水素水などにそこまでの労力をかけているほど暇ではないので、例えば水素水を推している人は信用に足るのかとかその主張に無茶苦茶なところはないかなどの情報を利用することになる。

水素水を手放しに受け入れるのは当然危険だ。だがツイッターで水素水はダメという論調があることを以って水素水はダメと盲目的に判断するのも危険ではないだろうか。